昨今、企業の不祥事が多発しており、企業にはコンプライアンス(企業活動の経営倫理や社会・社内ルールの順守)の重視やCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会責任)の啓発が強く求められています。このような背景から、多くの会社では企業倫理を「社員行動指針」として一冊にまとめて全社員に配布したり、社内研修での推進を進めています。
今回は、会社が社会に及ぼす倫理的なものではなく、本社の担当者が気づかないうちに営業部門に影響を与えている「言葉」や「行動」に焦点を絞り、実例を挙げながら考えていきます。
たとえば、セクシュアル ハラスメントと同様に、最近問題視されてきた“パワーハラスメント(パワハラ)”があります。一般的にパワハラは、職場内での上司の言動による圧迫や中傷を指します。それ以外にも、本社各部門の担当者が営業部門に対して無意識に行っているパワハラもあります。よく心理学でメラービアンの法則があります。人が人をどう判断するかというと、表情と態度が55%、言葉が7%、言葉のニュアンスが38%なのです。なんとほぼ半分以上の割合で表情や態度が相手に伝わるのです。次にニュアンスは、言葉の語尾や上げ下げで「バカ!」というのと「バカァ~ン」というのでは、伝わり方が全く違うということです。実は言葉で話しても7%しか残らず、表情態度やニュアンスが人の記憶に残るのです。何気ない職場のコミュニケーションの中でも、パソコンを見ながら挨拶するのと、相手の目をみて挨拶をするのとでは、伝わる印象が私は、パワハラには大きく2つのパターンがあると思っています。
ひとつは、社員の書類提出時や業務に関する相談を依頼された場合の対応です。職場では「提出期限は守ってください」「社内規定でそうなっています」「例外には対応できません」などと、担当者が電話で話している光景を見ることがあります。
担当者に質問や相談をしてくる社員は、自分ではよく分からないから聞いてくるのです。自分が理解していることは相手も分かっていると思いこみ、専門知識のない社員に、クールに対応することはある意味でパワハラだと思います。社員にとっては話もしたことがない、顔も知らない等で聞き返しづらい状況になっていればなおさらです。これもよく聞く話です。営業部門から本社部門に電話をした際、社名と部署名と氏名を名乗る企業がありますが、現場のスタッフは、急いでいるケースが多い為、社名と部署名と氏名を名乗られても、氏名まで聞き取れない或いは聞き流すケースがよくあります。逆もありますが。。
営業部門側で部署名と名前を名乗っても、改めて電話をとった本社側のスタッフが一度名前を言ったという理由で名前を名乗らないケースあるいは名前すら言わないスタッフも多く見受けれられます。これもある意味、受け止め方によってはパワハラになる可能性があります。
取り次ぎ電話であってもお互い名前を名乗るのが社会のマナーであり、お互いの名前を知ることが組織における一番のコミュニケーションの基本です。電話のマナーは、企業により色々と流儀がありますが、基本的に電話とは、間違いなく電話した先が希望通りの会社・部署につながったのかが大切で、次が会話しているお互いの名前を紹介しあうことで組織間の壁がなくなり、コミュニケーションが円滑になると考えています。皆さんの職場の流儀はいかがでしょうか。
2つ目は、本社部門の幹部クラスの営業部門に対する態度です。本社部門は営業部門のとりまとめ役であるため、自分が評価や決定権を有しているかのように思い違いをすることがあります。意識していなくても、他の部署とは一線を置くような態度をとったり、上から見下ろす言葉の表現をするなど…。
社員をみると、職場仲間なら言えることでも、幹部クラスに対しては多少遠慮がちになるように感じられます。こうしたことに気づかずに、担当者は無意識に自分の考えを押しつけたり、無理な依頼をすることもあります。営業部門の幹部から「本社の幹部が言うなら反対しても仕方ない。あとでもめても困るから…」という、本音が聞こえてくるようです。本社の幹部はトップと常にコミュニケーションをとっているので、自分が社長や幹部役員であるかのように錯覚することがあります。相の気持ちを配慮せず、つい強気な態度となることも「パワハラ」と言えます。
営業(弊社の営業に関わらず)での経験を持つ人が本社各部門の担当者になれば、こうしたパワハラも少ないと思います。しかし本社部門から一歩も外に出たことがない人は、このパワハラの存在すら気づかないこともあります。私たちが組織共同体の一員として社会で生きていくためには、最低限守る必要のある社会的ルール、モラル、マナーなどがあります。これらは若手社員に限らず、経験豊富な人でも身につけていなければならないことです。
本社各部門の担当者は、それぞれの持ち場、立場で、常に社員が安心して勤務できるように留意していく必要があります。創造的な姿勢を持ちながら高いモラルのもとで、責任と良識ある行動を心がけたいものです。